2014年08月21日

Take the 'A' Train

Take the 'A' Train

邦題は『A列車で行こう』。
デューク・エリントン楽団のシグネイチャー・チューン(テーマ曲)として有名な軽快なスウィング曲。

1941年、デューク・エリントン楽団のピアニスト兼作編曲者であったビリー・ストレイホーン(William "Billy" Thomas Strayhorn 1915-1967)による作曲。

作詞は1944年、ジョイア・シェリル(Joya Sherrill)に後付けされたもの。


Billy Strayhorn
ストレイホーンは1915年、オハイオ・デイトンの生まれ。
幼少期、祖母から讃美歌を習い、音楽学校でクラシック音楽を学んでいたが、クラシックの作曲家として身を立てるという夢は当時の人種差別の現実によって打ち砕かれる。
そして、19歳の時、アート・テイタムやテディ・ウィルソンらのピアニストの演奏を聴いたのがジャズへの入り口となったという。

初めてエリントンの演奏に接したのは音楽学校の学生でありながら既にミュージシャンとしてキャリアを踏みだしていた十代の頃、当時の地元ピッツバーグへやって来た彼の公演を観に行った時だった。

その後1938年、評判を聞いて面会に来たエリントンから「(ピッツバーグから)NYに来ないか?」と誘いを受ける。
その時のエリントンの道案内のセリフに、"Take the 'A' Train."(A列車に乗って来るように)というものがあったらしい。


ストレイホーンはピアニストで作編曲家であり、自身もバンド・リーダーを務めていた。

同曲以外にも、"A Flower Is a Lovesome Thing", "Blood Count", "Chelsea Bridge", "Drawing Room Blues", "Isfaan", "Johnn Come Lately", "Lotus Blossom", "Lush Life", "Rain Check", "U.M.M.G.(Upper Manhattan Medical Group)."といった作品の作曲で有名な他、
エリントン楽団最後の20年間における楽編曲において重要な役割を担い、
また、補助的なピアニストとして(エリントンが指揮やパフォーマンスに専念する場合など)演奏に参加する事も多かった。

彼とエリントンの協働関係の全容を表現するのは容易ではない。
彼は控えめな性格であり、同性愛者である事を表明し公民権運動家として活動していたこともあって、多くの作品をエリントンのものとして発表する事があった。
一方でエリントンも後年、協働で創作したものであっても彼単独のクレジットで発表するなどの配慮を見せた。

ともあれ、彼がエリントンの音楽にクラシックの音楽教育で培った和声技法やリニア・ラインをもたらし表現の自由度を広げた事は間違いない。

後年、一時的にエリントンの元を離れて製作された彼のソロ作品では、エリントン楽団では見られない哀愁やほろ苦さを帯びた作品を聴く事が出来る。



A列車について
古いブルースなど蒸気機関車をモチーフにした曲も多い為、同曲も汽笛を鳴らながら走る機関車をイメージした様なアレンジが存在するが、元来はニューヨーク市内を走る地下鉄の電車をモチーフにしたもの。

「A列車」とは、ニューヨーク市地下鉄(MTA)の、ブルックリン東地区からハーレムを経てマンハッタン北部を結ぶ8番街急行 (A Eighth Avenue Express) の名称。
同地下鉄では同じ路線を走る快速や各駅、運転区間・系統(ライン)の異なるものを区別するため、車両の前面に利用者への誤乗防止の注意喚起としてA、B、C、といったの丸い円盤状の看板(日本でいう種別札)が掲げられている。

表題は、それらのラインの中から、「NYの外から来てハーレムに行きたいなら、停車駅が少なく早くハーレムに行ける"Aライン"の看板のついた電車に乗るように」といった意味が込められている。

歌詞の内容もマンハッタン各地の名称をあげつらえたもの。
歌詞中の「シュガーヒル」は、ハーレムの西に位置する文化人や経済人の住む高級住宅街。
沿線のメインストリートである125丁目には黒人音楽の聖地アポロ・シアターがある。

Aラインは路線長31マイル以上で地下鉄の一区間としては世界最長を誇る(2008年現在)。






P.S.
晩年、エリントンはコンサートで同曲を紹介する際、
(得意げに)「続いてお届けする曲の特筆すべき点は、当バンドきってのピアニスト(自分自身の事)のソロから始まるという事です」
と語るのが、MCネタの定番になっていたという。

また、エリントンはインタビュー等で「NYで一番ホットなジャズを聴くにはどうすれば良いですか?」などと聞かれた際には、冗談めかして「A列車に乗れば良いのさ」と返答していたとか。
posted by Clark at 00:58 | Comment(0) | JAZZ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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