2014年08月19日

特殊奏法 ステージング編

ここではギター奏法以外のステージング論に関して考察します。
(もはや本講座の主旨とかけ離れてる気がするけど、気にせずに)




★アクシング
 アメリカ英語圏では、ギターやベース・ギターなど幾つかの楽器の事をスラング(俗語)として「AX(斧)」と呼び慣わしています。
 これはその形状や大きさ、使い慣れた愛用品といった意味合いなどから名付けられたものと思われますが、時として楽器そのものを文字通り「斧」として用いなければならない瞬間というのが長い音楽人生の中には登場します。
 それは、アルコールやその他禁止薬物などによって激しく酩酊した観客や、危険思想を持った観客、バンド・メンバーの誰かに恋人を寝取られたとかで激しく恨みを持った客などがステージに上り込んできた場合です。
 そうした場合、ヴォーカリストは武器となるものを何も持ちませんし、ベーシストは(ビシャス氏の様にステージ裏にゴースト・プレーヤーがいた場合を除き)音楽をキープする為にビートを刻み続けていなくてはなりません。
 ドラマーにはスティックという武器がありますが、彼彼女らはいかんせん素早く移動できない状況にあります。
(気の利いたドラマーの場合、危険分子を察知すると素早くシンバルの留め金を外し、ジャグラム(フリスビー型をしたインドの古典武具)の要領で標的に投げつけて撃退してくれる場合もありますが)

で、多くの場合、ギタリストである貴方の出番となるわけです。
コツは簡単でまさに斧の様にギターのネック部分をしっかりと握り、既に暴漢と化してしまった観客の頭にボディ部分を振り下ろすだけ。
(反撃を避けるため、戸惑いや手加減は禁物です) そしてその後、他の観客がドン引きする事は必至なので、前述した様々なアクションや雄たけび、弦の引きちぎりなどで豪快さをアピールし、これも「演出」の一部なのだと観客に思い込ませてしまいましょう。
(その間に気の利いたライブ・スタッフは気絶した暴漢を撤収してくれている筈です)

* そして、注意事項が一点。
 アクシングを行う際には、必ずストラップやシールドなどの付属物を外しておく事。
出ないとそれらが絡まって、暴漢を撃退するどころか貴方自身が自滅して怪我を負う危険がありますのでくれぐれもご注意を。




★ファイア・ブロウイング
 読んで字の如く「火吹き」芸です。
 多少の技術は必要ですが、文字通り熱く燃え盛るライブを行うにはもはや欠かせないステージングの一つとなったこの「火吹き」。
(但し、本項を読んで実行されて何らかの損害が生じても、当方は一切責任を持ってません)

 何故、ギタリストがそんな事をやらなければならないのか?
 他のメンバーでも良いのではないか?
 貴方はそう思うかもしれません。
 しかし、考えてみてください。
 ヴォーカリストや管楽器奏者は火吹きによって大切な喉や唇を痛めてしまってはその後の演奏が不可能に。
 ベースやドラムは前述したように、機関車でいえば車輪やレールにあたり、ライブのテンションを持続するという重要な役目を担っている為に常にビートを刻み続けなくてはなりません。
 同様に、複雑で高価な電子機器に囲まれたキーボディストやDJが「火吹き」をするべきで無い事も、賢明な読者諸氏にはすぐご理解頂けることと思います。

(ギタリストは機関車に例えるなら、たまに鳴る汽笛やモクモクという灰色い蒸気といったところでしょうか?
蛇足ながら、演奏の間のMCの最中における「火吹き」は最早タダの大道芸となってしまう為、僕としてはお勧めしません)

 という訳でやり方は、まず、吹くべきタイミングが近づいたら普段の水分補給の振りをしながら、予めグラスやペットボトルに容れておいた燃料をさりげなく口に含むこと。あとは、それをライターや(用意できる場合は)松明などに向け、一気に吹き付けるだけです。
 一気に燃料を火種に吹きつければ豪快な火炎放射に、霧状に吹き散らした後に火種を付ければ小規模な爆発となります。
(後者の方が危険度高し)
(最近は「ジャグリング」用の松明が「ハンズ」等で気軽に手に入ります)

 終わったらさっきと同様にさり気無く、水分補給用のドリンクを含んで口の中をゆすいでおきましょう。

 燃料としてオススメなのは白灯油、若しくはアルコール度数96%以上のウオツカ「スピリタス」です。
(気の利いたハコのマスターはドリンク・メニューには載せていなくとも一本位は常備しているものです)
ガソリンは気化した燃料に引火する恐れもあるし、後味も悪いのでお薦めできません。
トルエンは上記理由に加え、毒性が高いため特にお薦めしません!

 コツは、口に含んだ燃料が無くなっても勢い良く肺の中の空気が全てなくなるまで息を吹き切る事。
出ないと燃料が口元に引火して火傷しかねません。
あと、間違っても燃料を飲まない事。
(スピリタスの場合は一応飲料物でありますが、激しく酩酊してその後の演奏が困難になる事は必至です:経験者談)


* 注意事項:
・ライブ中は水を入れた容器と燃料を入れた容器の取り違えに注意!
(こっそりと分かりやすい印を付けておきましょう)

・衣装に毛羽立ったファーのついたモノや燃えやすい毛皮、発火性の高いヘア・スプレーなどは用いないこと!

・万一に備え、消化器やバケツは自前で用意しておくこと!

・事前に会場のマスターの許可は取っておくこと!
 勝手にやると多くのライブハウスの場合、以降出入り禁止となります。

・観客の中には炎を見て恐怖を感じ、それによってパニックを起こす方もいるので、その場合の対応も考えておくこと!

・ついついステージの前端に乗り出してブロウしたくなりがちですが、お客様との距離が近いステージでは絶対に吹かないこと!
 残った燃料がヘア・スプレーなどで綺麗にセットした観客の頭髪に燃え移ったりすると文字通り髪の毛のブロウに、或いはそれ以上の惨事となりかねません。

・上記を踏まえても、火吹きは観客からみて横方向に(勿論ヴォーカリストなど他のメンバーにも注意して)、斜め上方に向けて行うべきです。
 但し、天井が低いライブ・ハウスの場合は要注意。
ハコによっては少しでも天井を高くするために天井板を設けずに天井の配管がむき出しになっている所も多く、それらに引火したら新聞事の大惨事です。

・また、地下にあるライブハウスなど、多くのハコでは消防法によって火災報知機とスプリンクラーの設置が義務付けられているのでこの点にも要注意。
 もし、報知機が作動したら、観客は文字通り冷や水を浴びせられることになり(しかもスプリンクラーの水は古くなった汚い水であることが多い)、ライブの熱狂など一気に興ざめする事は必至です!

 要は冒頭と矛盾するけど、やらないにこした事は無いってこと!!
 (ある経験者談です)


*補足: 以前、路上演奏をしていた時の仲間で「火吹き芸」を生活の糧としている方がいました。
 彼の場合、MC(?)のご挨拶をしたかと思うと(燃料を含む準備動作なしに)手に持った松明からイキナリ火を噴きます。
 何故そんな事が可能なのか?
 タネは事前に白灯油を胃袋まで飲み込んでおき、人間ポンプ(よく飲み込んだ金魚とかを生きたまま吐き出す芸をするアレです)の要領で逆流させ口内に蓄積するというもの。
しかる後、数回ずつ分けながら噴き出していたのです。

胃の腑から灯油を逆流させる時の苦しげな彼の顔は、まさにその瞬間、彼の人生そのものを表現した漢(おとこ)の顔でした。

 そんな彼は激しい芸の結果、喉や消化器系を激しく痛めて声を出すのもやっとの状況となり、やがて路上から姿を消しました。
 思えば彼の場合、芸の最中にも官憲にショッ引かれる事がしばしばでした。
 それなのに何故、彼が「火吹き」にこだわったのか?

「今生きているうちにやらにゃあ、あかん」

 それは、文字通り彼の命をかけた「芸」であったのです。
(早いご回復を心よりお祈りします)
(追記:謹んでご遺徳を偲ばせて頂きます)




★弦切り
 これは文字通り、ギタリスト自身が弦を切ってしまうというステージ・アクションです。
これはそれ以上のアンコール曲がない事や演奏に辟易した事をアピールする為に用いられることもしばしばですが、 主に演奏中に一本ならず二、三本の弦が切れてしまいその後の演奏続行が困難になった場合や予測外のアクシデントが起こった時に、それを逆手にとってギタリストが注目を集めるというアクションです。
 コツはその際に、某泉谷しげる氏の様にニッパーなどを用意せず、豪快にその右手で引きちぎる事。
(その際、左手はネックのナット部分をシッカリと抑えてギターそのものが壊れないようにしましょう)
その際、多少の右手の流血などは発生しますが気にしてはいけません。




★裸芸
 ヴォーカルその他の一部のパートでは単なる露出狂となってしまいますが、ギターその他幾つかのパートではその楽器によって貴重部分を見えなくし、全裸でステージに立つという事がしばしば行われます。
 この場合の注意点は、ジャズ・ギターなどで良く見られるようにストラップを短くし、高い位置でギターを弾かず、必ずストラップを長くして貴重部が隠れるようにする事。
 また、ギター風車など前述した幾つかの「アクション」をする際には貴重部が露出する恐れがあるため両足を交差させて巧みに貴重部を隠蔽しなくてはなりません。
 そして、ステージ上の移動の際にはやむを得ず客席側に背を向ける場合もある為、臀部やその他周辺部分はお風呂でちゃんと綺麗にしておくように。

* また、ストラトキャスターなどアーミング用のスプリングが背面にあるギターでスプリング・ザクリの蓋を外している方は要注意です。
 ふとした瞬間にスプリングに体毛の長い部分が挟まれて身動きが出来なくなったり、最悪の場合、アーミングの際に貴重部の皮膚の最も柔らかい部分をスプリングに挟まれてドエラい事になります。
 あの時の痛さといったら!
 という事で、くれぐれもスプリング部分の蓋は面倒臭がらずに閉じておきましょう。



★ギター・ペイントに関して
(この項目自体は「ステージング」ではありませんが、一般論としての注意事項です)
 さて、本論で述べてきたような様々な奏法、アクション、ステージングなどを行う際、ギタリストの右手が負傷し、流血してしまうという危険はやむを得ないものです。
ですが、観客の中には流血を嫌ったり、それを見る事で不快感をもよおす方々が大勢います
(中には、格闘技ファンなどそれによって熱狂したり、変態的嗜好によって性的興奮を感じるお客様もいますが)

 で、僕としては流血を目立たせないため、白系統や木目を活かした薄い色のギター・ペイントはお勧めしません。
 購入の際は赤もしくは黒系統の濃い色の楽器を選び(もしくは自らリペイントし)、ストラトキャスターなどに見られる白いピックガードは油性ペンなどで濃い色に塗りつぶしてしまいましょう。




(以下、自主規制)



*上記の幾つかは、失われゆく文化を民俗学的見地から記録しておくべく記述しました。
 安全性や様々な観点から考えれば確かに消えていくべき運命の文化かもしれませんが、少しでも多くの方の記憶に残り、それらに命を掛けて来られた方々のご遺徳も偲ばれれば幸いです。
タグ:ギター
posted by Clark at 05:41 | Comment(0) | 特殊奏法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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